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草原の草は妙に青白くて半透明で、踏みつけるたびにパリパリと乾いた音を立てた。齧ってみると、錆びた金属のような味。足跡が綺麗な一直線に残っている。誰かに踏まれるだなんて、この草たちは進化してこのかた想像したこともなかったのだろう。
私は何故、前に向かって歩いているのかわからない。そもそもこちらが前なのかもわからない。何もわからない。
わからないけど歩くしかない。
わからないから歩くしかない。
この足跡が巨大な宇宙にとって、素粒子ひとつぶ分だけでも、変化の兆しであるように。