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ずうっと昔から、その書店の玄関先には三毛猫が居た。時折欠伸をしながらふくふくと昼寝している。
もう数十年になるぜ、尻尾が割れているんじゃないのかい、と冗談交じりに話したことがあるが、なぁに旦那。種明かしをすれば詰まらない話で、代々子猫が跡を継いでいるのさ、と言われてなるほどと納得したものだ。
ただ、思い返すと、その時ぼくは独り言をつぶやいただけだったように思うし、周りに人などいなかったような気がするのだけれど。