テレビを点けたまま、PCでタブブラウザを開き、となりの台所ではお鍋がことこと煮えていて、読みかけの漫画が床の上に3冊。そんな部屋で泣く君を慰めている。
そんなに泣くなよ、泣きたいだけ泣けばいいさ、いい加減にしろよ、いつまでも待つよ、アンビバレンツ、矛盾と心理、ずっとずっと慰めていると、君は調子に乗ったかのように声を上げて更に泣く。下らないなと思うけれど、ここで放り出したら僕はしばらくずっと、涙目の彼女にやきもきしながら生きていかなきゃならないんだ。根気強く訊く、ねえ何があったの? 何がほしいの? 僕はどうすればいい?
長い長い時の果て、或いはほんの数分の後、君はひょいと泣き止んで、当たり前みたいに僕に笑いかけるのだから始末に終えない。彼女の笑顔を見るたび、すべては台本どおりの物語だったことを思い出すのだけれど、そのうちまた君がへそを曲げた時、僕はすっかりそれを忘れ、少しうろたえながら慰めはじめるのだろう。
君なんて本当はどこにもいない小さな手鏡なのにね。