少女は冷凍庫の中で恋をする。アイスクリームの影に、氷を透かして、いつも見えているのはあの人の影。少女もあの人もずっと凍り付いているから、動くことも近づくことも出来ないし、離れることも腐り落ちることもない。
考えごとさえ出来ないほど冷凍された少女が恋をしていると知れるのは、あの日ここに放り込まれた時以来、ずっとかたく張り付いたままのその笑顔。恋をしたそのままの姿で、少女はずっとそこにいる。あの人も。
いつか世界が滅ぶ時、いつか戦が始まる時、電気が止まり、コンセントが抜かれ、老いた太陽が世界を飲み込み、或いは誰かの気紛れで扉が開けっ放しになり――すべて溶け落ちるその時まで、少女はかりそめの永遠を過ごす。