恋人と一緒に歩いていたら、いきなり見知らぬ人が現れて、この泥棒猫!だとか何だとか、古式ゆかしく私を罵倒した。泥棒だなんて、人間を物扱いするとは失礼ですね、と言うと、人間の部分になど興味はないのだと言って、恋人の頭に生えていた無数の緑の芽をぷつぷつと全て抜いた。
見知らぬ人は芽を透明なカプセルに放り込み、これで未来の世界は救われます、と満面の笑みを浮かべ、銀色の服を煌めかせてひょいと消えてしまった。私は恋人を見つめたけれど、相変わらず不思議そうな顔で私を見つめ、あなたは誰? と同じ台詞を繰り返す。
髪の毛が茶色一色になってしまったのは惜しいけれど、なあに、大した問題ではない。私はまた恋人に手を差し伸べて、さあ、あと少しでつきますよ、と優しく声をかけた。