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君はいつも楽しそうに踊っていたから、展覧会の中で一番好きな展示物だった。科学者の叔父さんから貰った無料チケットで毎日観に行った。叔父さんに熱心さを褒められたのは良かったけれど、叔父さんの作った乗り物には目もくれずに君ばかり観ていたものだから、どの展示物がお気に入りかね、と訊かれた時には少し困った。
展覧会の最終日には館内に隠れておくつもりだった。深夜に君を連れ出してどこか遠い町に逃げよう、君の踊りと僕のハーモニカで路銀を稼ぎながら旅を続けようと本気で思っていたんだ。だけど現実は、立ち入り禁止の通路の奥、ロッカールームの机の下からあっさり引っ張り出されて、大目玉を喰らってそれっきりだ。
警備員に首根っこを掴まれたまま、外に放り出される直前に君を見た。君はもうちっとも動いていなくて、かくんと首を垂れて、手がおかしな方向に纏められて縄で縛られている。その格好があまりにも人間離れしていたから、僕は俄かに恐ろしくなり、ひどく泣いてしまった。僕が罪を悔いたものと誤解した警備員に慰められる羽目に陥ったのは一生の不覚だ。
そう、僕はまだ、世界が電気の力で駆動していることも知らない小さな子供だったんだ。