お鍋をことこと、煮込みながら、一日の物語を考える。朝、寝坊しかけたこと。学校に行って、お昼は学食。午後は小テストに失敗してちょっとへこんだけれど、帰り道に寄った本屋さんに大好きな漫画の新刊が出ていたので気分良くなって。帰宅して漫画を読んで、宿題を済ませて、おなかがすいたので、冷蔵庫に入れてあった二日目のカレーの鍋をことこと。
なんて、それは全部うそ。
学校にも行ってないしテストもしていない。本も読んでいないし、宿題だってもちろんない。
そして、お鍋の中身だって本当は存在していないんだわ。
ぬけがらの骨みたいな私は、乾いた音をたてながら天井を見上げた。もちろんそこには天井もなく、突き抜けた大きな穴の上にぽっかり月が見えていた。