赤マルジャンプ感想(新人作品編)

2007WINTERの赤マルジャンプ、落ち着いて読んだら新人作品がなかなかの粒揃いに感じたので、せっかくだから軽く全漫画感想をやってみようと思います。昨日描いた分以外の読みきり作品について触れます。ラストにまで言及するネタバレ感想になりますので未読の方はご注意。

KAITO「不恋愛戦隊 ハヤタ☆ジョー」

以前本誌に掲載されたギャグ読みきり「ハピマジ!」から格段に上手くなってる!
「ハピマジ!」掲載当時のジャンプ感想、自分はこんなこと書いてました。

何だか惜しい。テンポもいいし絵も上手いのだけど。
こういうことを言うと「新人がそんなわけないじゃん!」と反論を頂きそうだけど、
「本気出して描いてない」みたいに見えるのですよ。
この言い方がマズければ…「照れがある」って感じかなあ。

そういう印象が、今回の読みきりにはなかったんです。こういう言い方は失礼に当たるかもしれないけど、とても真摯に作品を描いてる、と感じました。しかも元々実力が高い方なので、最後まで面白く読めました。女の子がきちんと可愛いっていうのが強いと思う。ただ、ギャグのネタにありがち感が漂うのが勿体ない。いまさらそのコスチュームでなんたら戦隊はナイだろうと。どっかで見たようなギャグを描くくらいなら、キャラが異常なラブコメ作品を描いたほうがいいんじゃないかと感じました。
とはいえ自分の中では「前回からのスキルアップ」という点も含めてかなり高評価。次回作も期待しています。

及川友高「籠球フラッシュ!」

チビの少年がプレイを通じてバスケの楽しさを伝えるってストーリー。爽やかで読後感もいい! もうちょっと物語に起伏があれば読み応えがあったんだけど…。主人公が打ち負かされて悩んでいたのは回想の中でだけで、今現在は特に迷いなくバスケやってるっていうのがあっさりしすぎな気がするんだよなあ。回想で済ますんじゃなく、試合の中で一旦負けかけて「チビ」って言われて奮起…って演出にするだけでだいぶクライマックスの盛り上がりも違ってくると思うんだけど。
でも「バスケは楽しい」っていうメッセージはすごい伝わってきた。

斎藤修「MILE=LIFE」

刑務所を増設するより、ふつうに奉仕活動をさせて分単位で命を見張る刑務官が各囚人にくっついてるほうが余程人件費がかかるんじゃ…と1ページ目で思ってしまいました。設定がちと無理無理っぽい。主人公のヴェルが特別な囚人だったってことじゃ駄目なんだろうか。ヴェルとロズの、命がかかっているのにお互い信頼しあっているという不思議で緊張感のある関係は魅力的だけど、そういう関係に持って行くための設定付けに練りこみが足りないのが惜しい気がしました。
いきなり文句付けてしまいましたが、基本設定を呑みさえすれば話は面白かったです。ロズのキャラが魅力的。領主を倒したところで「でもこれで一件落着じゃないだろ!」とツッコミ入れかかったところでのアフターフォローに惚れました! この2人の活躍、別エピソードを読んでみたいです。

佐藤真由「白猫豆腐刀」

絵が好み。画面に多少メリハリが足りない(バストアップで話が進みすぎ)なのが気になるところですが、そのあたりはおいおい上達するものだと思います。豆腐刀って発想は面白いです。しかし五大元素を出してこられるとジャンプ漫画としては「またかよ」って気が…。何かうまいこと別の理屈をくっつけられなかったんでしょうか、やっぱ五大元素はどうしても避けられない通過点みたいなもんなんでしょうか。
説明台詞が多めなのが気になりました。おはるさんと市松屋の気持ち、こうも主人公に説明されてしまったら感動しにくいところです。謎解き部分が岡っ引き任せでページめくったら終了していたのも肩透かし。どこを一番描きたかったのかポイントぼやけてるように感じました。

浅野裕喜子「Pictman」

キャラクターがが可愛いです。絵的にも行動も魅力ある人物を描いているなあと思いました。五十嵐さんのくるくる変わる表情を見てるだけでも楽しいです。
話は好みなんだけど、ちと詰め込みすぎかな。五十嵐さんが襲われるところ、実は保弘が絵だったこと、鉄扇の回想場面、「サンシャイン」が実体化する場面…と、見開きでドーンと描けば見せ場になりそうな場面がどれも小さめのコマで描かれてて。例えば保弘の追っている人物について描かなくても「五十嵐さんが不思議な少年と出会い、絵を描く楽しさを取り戻す物語」として十分に成立するわけですから、ここはページ数を考えてどこかを涙呑んで削るべき…だと言うのは簡単だけど描くほうにとっては難しいんだよなあ(自戒を込めて)。

濱田浩輔「流星ストーム」

あれ、これもバスケ漫画? ミニバスケだから違うのか…? せっかくの読みきりなんだからテーマ被りは編集さんのほうで避けてあげた方がいいんじゃないのかとか思いつつ読んでました。テーマはバスケそのものじゃなくて、3人の微妙な三角関係なんですね。それならなおさら、敢えてバスケぶつける必要はなかったんじゃないかって気が…。
最初、3人のうち誰の視点で描かれているのかわかりにくく、場面転換も多いので混乱してしまった部分もありますが、最後は青春って感じで「これから」を感じさせるラストで素敵だったー。みんないい子なのが切ないですね。少年少女の揺れる気持ちがよく描かれてたと思います。
あとはやっぱ、コマ割りがつまり気味で「抜き」のコマがないのが気になる部分かなあ。でもジャンプでスポーツバトルに偏らない等身大の学園モノというのは今ひとつもないですから、こういう作品もちょこちょこ掲載されると嬉しいです。

古味直志「island」

好みでいうと今回ナンバーワンで好きな作品。これはいい! 主人公のアイラとマルー、絵の雰囲気、そして「閉鎖世界で外の世界に憧れる」という設定、めっさ私のツボにストライク。コマ割りは新人さんらしくゴチャついていて、拙いと感じる部分も多いのだけど、人物を超ロングで小さく描きこんだコマなど、作品世界の「空間」を感じさせようという意図も感じられるので今後に期待できるかも。
マルーが何故文字を読めるかとか(14歳にしては人間出来すぎてるような描写も気になるし)、すぐ外の海が深さ20センチくらいなら400年のうちに誰かが気付いてるだろうとか、設定に微妙な部分は多かったんですが、最後「外の世界」に手を取り合って駆けていくふたりの少女の絵は開放感あって素晴らしい。
今後、本誌掲載を狙うためには、もっと連載を見据えた設定の話を描かなきゃならないのかもしれませんが、この話は1本の独立した物語として大好き。すっごい個人的に贔屓しちゃっててすみません。

深山太陽「ものがたり」

ものすごい展開速ええ! 妖刀の説明から夢枕に立つ男性の話まで3ページで突っ走ってて、ああ設定の説明詰め込んじゃってるなあ…と思ってたら同じ密度で真犯人見つけてやっつけるとこまで突っ走ってるからさすがにびっくり。余韻も何もない、詰め込みすぎにも程があるよ。妖刀の精が具現化して悲しむ場面は、せっかくのいい場面なのにバストアップ連発は勿体なさ過ぎる。下半身を描かないと「人外」っぽさが出ないよ!
…って感じでまいったなあ、非常に辛口の感想を抱いてしまいました。画力はある方だと思うし、設定も悪かないんですが、特にどんでん返しもないストーリーでしかもこの詰まり方じゃなあ。

ササイシンゴ「King's Gun」

なんかもう異常な個性に気圧されました。他にはない独特の空気。なんだよこの変な漫画はーと思いながら最後まで読みました。ラストページの別れの場面とかさ、なんで地面にENDでハンカチ振ってんの、ちょっとおかしいよ!とにかく無駄に読みにくい漫画ではありましたが、オリジナリティは高く評価できるものだと思います。台詞の言い回しの端々が魅力的でした。今後どう化けるのかを見守りたい感じ。

平浜矢陸「金と血」

正直、地味な話だなーと…。ファンタジー世界の中で魔人とか伝説とか言っている割りに、命がかかっているでもなし、主人公の双子(だよね?)の等身大の話のままで話が終わっちゃうのが意外な感じ。でも地味なりに妙な味があって面白い。魔人の魔人らしからぬ言動がじわーっと効いてくる。何だかんだでいい話だった。
少年ユキソがひとりで微妙に空回ってたのが可愛かったです。メガネ君はいいなあ。