紅マグロとか酢ダコとか

用事を全部クリアしたその足で「アタゴオルは猫の森」を観て来たのよう! 以下にネタバレを含む長文感想。イマイチまとまった文ではありません。
ちなみに私は「ヨネザアド物語」〜「アタゴオル物語」あたりが大好きで80年代までに発売された単行本はブロンズ社版「青猫島コスモス紀」を除いてコンプリートしてたんですが、しばらくますむら作品から離れていた時期があったもので「ギルドマ」は未読です(何だかとっても中途半端なファン歴披露)。映画を観る時はついつい「アタゴオル世界がどの程度再現されているか」に重点を置いてしまっていたので、映画の純粋な感想というには少々偏った視点になっているかもしれません。
※けっこう注文の多い映画感想になってるので読んだら顔が紙くずのようになってしまうかも。お湯にはいっても、もとのとおりになおらなかったらすみません。
公式:http://www.atagoal.com/
全体的に、小粒ではあるもののよくまとまった映画だったと思います。CGもまあ、アメリカとかの超絶技術には及ばないなりに頑張っていたと思うし、スベったり寒かったりせず、ミュージカル仕立ての音楽がたっぷり使われていたのには製作者のセンスを感じました。オススメできないような作品ではなかった、これだけは言っておきたいです。
ただ…観終わったときにまず感じたのは、
「ますむらファンにはヌルいし、アタゴオル初心者にはとっつきにくい。何とも中途半端!」
…という思いでありました。
私はヒデヨシって奴をよく知ってるから良かったんですけど、もし何の予備知識もなくこの映画を観たとしたら、アイツどう考えても悪者ですよね。祭りをむっちゃくちゃにするし、人の迷惑かえりみないし。一番どうなのよと思ったのはピレアに捕まって処刑されそうなときの命乞いですよ。仲間はどうなっても良いとかオレがギルバルスの魂を飲むから助けて〜ですよ。
ファンの視点で見れば「ヒデヨシはあのくらい卑怯なことは平気で言うだろうけど、そんな台詞はこの映画を単独で考えた場合にちょっとやりすぎだからなー。卑怯属性は削られてヌルい友情語っちゃうんだろうな…と思ってたら思いっきり言い切ったよこのヒデヨシ! 脚本家グッジョブ!」って思いました。でもその一方で「…でもこれ、原作知らなかったら感動のファンタジー漫画映画としてマズくねェ?」と思わざるを得ません。何でこんな卑怯な猫をみんな慕ってるのか、助けてるのか(そもそも全面的にヒデヨシのせいで起きた事件じゃん)、ギルバルスはヒデヨシのどこに魅力を感じてるのか、ヒデコの選択はやっぱ間違いだったんじゃないのか…と、さまざまな思いが胸をよぎってしまいそうです。
そのくせラストでヒデヨシが放心状態のままエンディングを迎えるのも納得いかんー。まるで「いろいろあったけど改心した」みたいじゃんよ。違うでしょ。それでもまた元気に紅マグロ泥棒して追いかけられてこそのヒデヨシでしょ! 途中何度も「お礼は紅マグロ」を連呼するから当然エンディングの大オチへの伏線だと思ってたのにー! 最後ちょろっと踊ってたくらいじゃ納得できませんよ! それにあのエンディング映像は微妙じゃないですか? ピレアに操られて皆で同じリズムで踊ってたのと同様に見えて、悪いミスリードをしてしまいませんか。もっと「それぞれの人生・猫生を自由に生きてる」ような日常のワンシーンを入れたほうが良かったんじゃないかな。
かと言って、この映画がコアなますむらファンに向けられていたのかというとそれも疑問。全体的になんともヌルい勧善懲悪の世界。ますむらワールドってもっと狂ってるよね(断固としていい意味で)! 唐揚げ丸さんやテマリちゃんなどの愉快なサブキャラたちは序盤にちらっと出ただけですぐ囚われの身となって実質活躍なし(欠食ドラネコ団など当然の如くいなかった…パンツはいたっけ?確認できず…)。辛うじてスミレ博士が出たくらいでした。ツキミ姫の姫属性が消えうせてるのも謎でした。というかツキミ姫とテンプラ、女王の城に付いてった意味ねええええ! どう見ても足手まといー!! ヒデヨシのブレーキ役・友人としてのテンプラ、森の王の娘、超能力者のツキミ姫じゃないと淋しいよ…。あと個人的には、女王の城に向かうときに乗り込むのは当然桃色リンゴ丸でしょ! 航海でしょ! と勝手に期待してたら力いっぱい外してショボーん…。
本来の「アタゴオル的な」お話をやりたいのなら、もっとアタゴオルの日常を描くべきだったのではないでしょうか。ギルバルス出したい→彼が出るからにはバトル物にしなきゃいけない という話にでもなったのかなあ。ヒデヨシもギルバルスも一度に出そうとするか中途半端になったんだよ。「ジャングル・ブギ」との二本立てにすりゃ良かったんだ(まあ知名度から言って無理だとはわかってますが…群青剣とか磁場が原とか、CGアニメにしたら映えると思いませんか)。
風景は…好みの問題もありましょうが、やっぱますむら世界に比べて密度が足りないという印象です。「密度」としかいいようがないなあ。あの独特の濃密な空気。とにかくガチャガチャと沢山の物がひしめき合っているあの世界。CGで表現しきれないのなら紙に描けば良かったのにな。そもそも何でCGにしなきゃいけなかったんだよ〜と…。
音楽は…私は石井さんのつくる音があんまり好みではなかったので、さほど期待してなかったのですが(すみません、本当に個人的な好みです)思ったよりいいじゃんと思いました。ヒデヨシが歌ってる辺りは燃えました。祭りの雰囲気! でもピレアとかエンディングなどのしっとりした曲になると歌謡曲テイストが感じられて、アタゴオル世界から浮いてたような…。とくにピレアの洗脳ソングはもうちょっと無国籍風で怪しげな曲が良かったなあ。夏木マリが歌ってるぞーっとしか思えなかった…。本当を言うと、私の中でアタゴオルの連中がかき鳴らしている曲はビートルズなのですが(ざろんがんわいでんろう!)これに関しては人それぞれに脳内ソングがあるでしょうからどうしようもないですよね。
音楽ついでに細か〜い点をひとつ。唐揚げ丸さんがバイオリンを弾く場面で指が弦を押さえてないのが気になって仕方ありませんでした。あれ、全然演奏できてないよ。ちゃんと爪を伸ばして押すくらいの小細工してよ、手元がアップになるんだしさ。
さてさて、もういい加減にしろというほど「こうだったら良かったのに!」を書き連ねてしまいましたが、もちろんいい所も沢山ありました。最大のポイントは「ギルバルスかっこいい!」だと思うので、ギル様ファンは迷わず見に行っていいと思います。声もアクションも素敵! たぶんモーションアクターの人がかっこいいんだよ! ちょっとお節介キャラ化してる気もしますが私は許容範囲でした。
声優さんは全体的にいい感じでした。ヒデヨシの声は良かった。さすが「困ったときの山ちゃん」ベテランの演技だったと思います。網弦(公式サイトでは何故かカタカナ表記)の谷啓もいい声でした。声の違和感は特になかったなあ。あと、鑑賞前は人間キャラのデザインが微妙〜と思ってましたが、動くとこれがけっこう平気でしたよ。
本当はアタゴオルってテレビシリーズ(30分で完結する短いストーリーが続く構成)に向いてるんじゃないかなーとちょっと思ってみたりしました。この劇場版を発端にテレビアニメ化の話が持ち上がったりしないかしらとほんのり期待。まとまってないけどこの辺でおしまいです〜。